こんにちは。ビューズのスタッフ髙田です。今回は、うつ病などでうつ状態にある旦那さんや奥さん、家族への接し方について、お話します。
さて、旦那さんや奥さん、パートナーといった家族がうつ病、うつ状態の場合、接し方に悩まれている方は実際にとても多いです。私がアメリカニューヨーク州内でメンタルヘルスカウンセラーをしていた時、「パートナーがうつ状態で、どうやってコミュニケーションを取ればいいのか分からない」「私も自分のしなければいけないことがあるので、十分にパートナーに付き添い、話を聞く時間がとれない」という声を聞きました。専門家に相談することが習慣づいているアメリカでは、このような声から積極的に専門家に相談されていますが、日本ではどうでしょうか。
「頑張れ」って言ってはいけないらしい、楽しませようと明るくしたら負担になるらしい、など、一般的に聞く「してはいけないこと」を意識するあまり、どんな言葉をかけ、何をしたら良いのか、接し方を考え込んでしまう…。
自分が言ったことやしたことで、余計に落ち込ませてしまったらどうしようと不安を抱いている方も多いと思います。
しかし、このように言葉や行動を気にしすぎると、会話が減り、気まずい雰囲気になりかねません。
では、具体的にどのような接し方をして、過ごせばよいのでしょうか。
あなたの旦那さんや奥さんが安心する環境を考えたい
上記で述べたように、悩み不安になると、どんな接し方をしたらよいのかと本で読んだり、人に尋ねたりしてしまうものです。しかし、それはあくまで一般的な心理的傾向を基にした対応の仕方です。
うつと言っても、その症状の度合いや状態も様々なので、一般的な対応・接し方が必ずしも本人にとって適切なものとは限りません。
うつ病などの気分障害の人は、うつ症状が強くなるにつれ、言葉数が減ることがよくあります。頭の中でマイナス思考が広がることが多く見受けられ、誰も自分のことは分かってくれない、自分は一人だという強い「孤独感」を持ちます。そして、その孤独感から更にうつ症状が強くなるのです。
ですので、まず、その孤独感を軽減できる「何か」が必要です。そして、自分のことは誰にも分らないと思っていても、「自分の傍にはパートナーがいる」ことを感じられることが大切です。
そのためには、自分たちの関係を基にどんなことが旦那さんや奥さんを安心させられるか、思い返してみるとよいでしょう。
あなたの旦那さんや奥さんは、話を聞いてほしいのか、構ってほしいのか、ただ黙って傍にいてほしいのか、手を握っていてほしいのか、どんなことで安心しそうでしょうか?それは、本やネットといった情報の中にはありません。一般的な情報を知識としてもっておくことも大切ですが、自分たちの関係の中にあるヒントはそれ以上に重要です。
自分たちの関係を基にした安心できる環境づくりは、最低限必要なことであり、それができたからといって、回復に向かうというわけではないかもしれません。ただ、安心感を少しでも持てる環境があるということは、本人にとっては、大きな心の支えになります。そんな環境をつくれるのは、あなただけなのです。
自分自身の精神の安定を優先させてみる
その場の空気感や雰囲気というのは、時には言葉よりも強い影響力があります。旦那さんや奥さんがうつ状態であれば、落ち込み気味の空気が流れ、つい気持ちが引きずられたりするものです。
しかし引きずられた後、今度はその重い空気がうつ状態の本人へ跳ね返ります。つまり、お互いにどんどん落ち込んでいく可能性が高くなるのです。
そこで、自分自身の精神の安定が重要になります。
旦那さんや奥さんがうつ状態になると、必死に何かしてあげなければとパートナーのケアにばかり集中し、自分の心身状態をおろそかにしてしまいがちです。これが多くの場合、落とし穴になっているように感じます。
うつ病の方をケアするためには、まず自分が安定した心身を維持することが必要です。自分自身の精神を安定させるためには、何をしたらよいかにも集中するように心がけ、自分のための時間を確保することが重要なのです。
子供を対象にしたリサーチからも知られているように、親(周囲の保護者)がイライラしたり、不安を強く感じていると、その子供も強い不安やストレスを持ちます。逆に親や周囲の大人が精神的に安定していると、子供は安心した精神を養うことができます。
そしてこれは、うつ状態の旦那さんや奥さんにおいても言えることです。うつ病などのメンタル不調の方は自覚があるないに関わらず、総じて周囲の雰囲気に非常に敏感です。周囲の人が不安やストレスを感じたり、イライラしていると、イライラが移ったり、または自分のせいだと自責の念に押しつぶされかねません。
このような状況を防止するためには、まず周囲の方が安定した精神でいられるよう、自分自身の精神の安定を優先することが大切なのです。
第三者のサポートを積極的に取り入れよう
関係が近いと、旦那さんや奥さんへの接し方にどうしても感情が入ってしまいます。感情や思いやりが入るからこそ、与えられる安心感はありますが、逆にうつ状態のパートナーにとっては、しっかりしなければという気持ちが強いために、パートナーへは弱音や涙を見せられないこともあります。
そんな時は、第三者のサポートを頼りましょう。医療や福祉サービス、リワークプログラム、心理カウンセリングなどを利用することで、旦那さんや奥さんは、普段はパートナーに見せられない弱音や涙をさらけ出すことができるかもしれませんし、症状自体の回復に向かっていくこともあるのです。また、第三者のサポートに頼ることで、自分自身の精神の安定を効率よく実現することにも繋がります。
まとめ
これまで私は、実際にパートナーから勧められて心理カウンセリングやリワークプログラム等に行くことを決意したうつ状態の方に多くお会いしてきました。そんな時、本人自身もいつもパートナーにばかり頼ると重荷になってしまうのではと罪悪感などを持っていることが多く、その気持ちから第三者によるサポートを受ける決意をされたという声も聞いています。このようにうつ状態の方、さらにご家族もが、第三者とコミュニケーションを取ることで、お互いにほど良い距離を保つことができ、ストレスが軽減されるため、ご家族やパートナーとしての関係も安定していることが多く見受けられるのです。
安定した精神状態で、大切な旦那さんや奥さん、パートナーと共に過ごすこと。このことこそが、まず継続していきたい接し方の基盤になります。そして、これまでの自分たちの関係を基に、よりパートナーが安心できる対応をぜひ見つけてみてください。
安定した気持ちと思いやりを持って接していれば、特別な知識やスキルは必要ないように感じます。また、パートナーがケアできることと、第三者に頼ることとのバランスを考え、本人のためにもケアする側の精神の安定のためにも、全てを抱え込まず第三者のサポートに頼りましょう。