
うつ病の症状のひとつに「過眠」があります。過眠とは、必要以上に眠りすぎてしまうことです。これはただの「寝すぎ」ではなく、健康や生活に悪い影響を与えることがあります。この記事では、過眠が起こる原因や、それを改善するための具体的な方法をわかりやすく紹介します。正しい対策を知ることで、毎日をもっと元気に過ごせるようになりましょう。
うつ病と過眠の関係

なぜ過眠になるの?
うつ病の人が眠りすぎてしまう理由のひとつは、脳の中の「セロトニン」や「ノルアドレナリン」という物質が少なくなってしまうことです。この物質が少ないと、睡眠と目覚めのバランスが崩れてしまいます。
また、ストレスや悩みを避けるために、無意識に横になって眠る時間を増やしてしまうことがあります。起きていると過去の後悔や将来の不安に意識が向いてしまうため、これを避けるための防衛反応です。「現実逃避のための過眠」といえるかもしれません。ストレスを直視しすぎると辛くなるため、短い間であれば「眠ることでリフレッシュできる」こともありますが、長い目で見ると、問題が解決しないまま放置され、さらに大きなストレスにつながることがあります。
過眠が引き起こす問題
眠りすぎることで、次のような問題が起きることがあります。
- 周りの人とのつながりが薄くなる:たとえば、友だちや家族との時間が減り、孤独を感じるようになることがあります。
- 健康に悪い影響が出る:体を動かす時間が減り、体力低下、筋肉量の低下、体重増加など、体の調子が悪くなることがあります。
- やるべきことができなくなる:仕事や勉強、家事などが手につかなくなり、生活が乱れることがあります。
これらの問題が積み重なると、うつ病の症状がさらに悪化してしまうことがあります。
過眠を改善するための3ステップ

過眠を改善するためには、以下の3つのステップで対策を行うことが重要です。
ステップ1. 生活リズムを整える
まずは毎日の生活リズムを見直しましょう。朝は同じ時間に起き、夜は同じ時間に寝るようにするだけでも、体のリズムが整いやすくなります。
- 朝日を浴びる:朝の光を浴びることで、体の中の時計がリセットされ、セロトニンなどの脳内物質も分泌されやすくなるため、目が覚めやすくなります。
- 体を動かす:軽い運動を日課にしましょう。たとえば、散歩やストレッチなどがオススメです。うつの症状もあって沢山体を動かすのは難しいかもしれませんが、負荷の少ない散歩からスタートし、「今日も活動できた」という実感が得られると、気持ちも軽くなります。
ステップ2. 光を使った工夫
睡眠にもリズムがあり、リズムの調整に光が密接に関係していることが学術的に明らかになっています。
光を上手に使うことで、体のリズムを整えることができます。
- 光る目覚まし時計:自然光に似た明かりを出してくれる光る目覚まし時計を使うと、眠気が取れやすくなる人もいます。また、カーテンを自動で開けてくれるアイテムもありますので、太陽の光で目を覚ましたい方にお勧めです。
- 明るさを調整できる電球:夜は身体が自然と休息モードに入れるよう、白色では無くオレンジ色の電球にすることで入眠リズムが整いやすくなります。自然な光に近づけることも効果的です。
朝、日光に当たることで、人間は活動と休息のリズムを自然と整える機能を持っています。日照時間が短い冬の時期には特に、リズムが狂いやすいため積極的に取り入れてみましょう。
ステップ3. 「現実逃避のための過眠」を防ぐ
過眠の原因を色々と考えた結果、もしネガティブなことを考えたくないから、という現実逃避から来ているかもと感じたら、以下の手段を講じてみましょう。
- ベッドは眠るときだけ使う:いつでも寝られるように布団の上で過ごす時間が増えていることが多いので、日中にベッドで過ごす時間を減らしましょう。
- 寝る前にスマホを使わない:スマホやパソコンの画面から出る青い光(ブルーライト)は、脳を覚醒させてしまいます。画面を見ている時間は、寝ている時と同じく現実を忘れさせてくれますが、覚醒した脳は睡眠の質を低下させ、過眠を悪化させる要因になります。少なくとも、布団に入ったらスマホを見ないようにしましょう。
- 朝にカフェインを少し取る:コーヒーやお茶を朝飲むことで、昼間に元気が出やすくなります。現実逃避から抜け出すのに大事なのはきっかけです。小さな元気が出たときに一歩動くことで、過眠のループから抜け出すことができます。
- 悩みを書き出す:今の悩みを書き出し、自分のストレスに感じていることを確認してみましょう。やってみると分かりますが、次々と浮かんできて「こんなに悩んでいたのか」と驚くことがあります。その上で、何とか対応できることがないかを探して、1つでも抱えるストレスを減らしていきましょう。
これでも改善しない場合は、メンタルクリニック・精神科の医師や睡眠外来の医師に相談するのも大切です。
医療機関でのサポート

薬や治療の力を借りる
過眠が続く場合、メンタルクリニックや精神科での治療が必要になることがあります。抗うつ薬や睡眠薬の使い方を医師と相談し、調整してもらうことで症状が軽くなることがあります。
また、「認知行動療法(CBT)」と呼ばれる治療法も効果的です。これは、考え方や行動のクセを見直すことで、過眠の原因を細かく整理し根本から改善していく方法です。
記以外にも、いびきや歯軋り、動悸、息切れなど、他の症状が出ているようであれば、無関係と思わずに睡眠外来を受診してみましょう。血液検査や睡眠の検査を行うことで、他の病気(たとえば甲状腺の病気や睡眠時無呼吸症候群)が隠れていないかを確認することもできます。これらの検査によって、正しい治療方針を立てることが可能になります。
まとめ
うつ病で眠りすぎてしまう症状は、正しい知識と対策を知ることで改善できます。生活リズムを整えることや、光を活用する方法、必要に応じて医療機関での治療を受けることが大切です。
少しずつできることから始めてみましょう。小さな工夫の積み重ねが、大きな変化につながります。あなた自身のペースで、健康的な生活を取り戻していけるよう応援しています。