ビューズでは、気分障害の方を対象にした社会復帰支援を行っておりますが、その主となるのは集団プログラムです。自己理解系、身体系、コミュニケーション系、ビジネス系と大きく4つのカテゴリーに分類され、多角的な視点で社会復帰に向けたトレーニングを受ける機会を提供しております。
今回は、「自己理解系」の中でも、自分の疾病を正しく理解し、周囲に伝えることを目的とした「疾病理解」というプログラムについて紹介いたします。
一見すると「病気の勉強をするのかな?」という印象を持ちますが、そうではありません。情報を手に入れやすい現代、病気の名前をインターネットで検索すると多くの情報が出てきます。初めての診断を受けると、何も知らない状態が不安で、とにかく情報が必要だと感じて調べつくす方もいらっしゃると思います。しかし、インターネット上にある情報だけで誤った判断をしてしまうとかえって不安を招いてしまいます。また、無理やり自分に当てはめてしまい、今症状に苦しんでいる自分自身を無視してしまうと、無理をしたり、自分のことを認められず、苦しい思いをすることになってしまいます。断片的な知識や情報に左右されない為にも、医師やカウンセラーなどの専門家に判断をゆだねることも大切ですね。
知識ではなく、事実に基づいた自己理解を目指す
疾病理解では診断名に基づく一般論ではなく、今苦しんでる疾病を整理し、利用者同士で共有しながらリアルな自分の状態を把握することを目指します。
例えば、多くの方の話を聞く中で、病気が原因である症状と、性格や気質が原因である特性の区別がつかず悩んでいる人がいることに気づきます。こういった方に対し、ビューズでは、あくまで自分の疾病を理解する切り口の1つとするようにお伝えしています。
ここで、症状と特性の定義をご紹介します。
症状とは・・・障害によって引き起こされる健康上の問題
特性とは・・・その人が持つ固有の性質や特徴
確かに別物ではありますが、今まさに悩んでいる方にとってこの2つを分けることは重要でしょうか?
それよりも、日々の観察を続けて、小さな変化や繰り返している癖がストレスとなっている事に気づくことの方が、自分の状態を理解し改善方法を探すことに役立ちます。
観察して得られたデータは、一般化された知識ではなく、本人だけの「事実」です。無理に知識を当てはめるよりも、自分にはどんな考え方・行動の癖があるかを気づくことの方が、ストレスへの早期対処に役立ちます。逆に疾病名に囚われてしまうと、観察が偏り大切な事実を見逃してしまいます。
再発予防のために、課題を認識する
自分を観察し、自分の思考や行動の癖に気づき分析していくと、自分の心身に影響を及ぼす根本原因にたどり着きます。これを、ビューズでは「課題」と呼んでいます。
そもそも、発症に至った背景には多様性があります。置かれた環境でストレスを受け続けた結果であることが多いですが、逆に言えば、置かれた環境に対応できなかった理由があり、そこに本人の課題が潜んでいます。
気分障害の方にとっての根本的な課題は、「考え方の癖」です。
例:相手の評価を気にしがち、正解を過剰に求める、自分には能力がないと考える
こういった考え方は現実の適切な認識を阻害し、対人関係の構築や仕事の仕方などに悪影響となって過剰なストレスを抱えることにつながります。こういった課題が自分にあることを受け入れることは、自分の弱点を認めるようでなかなか辛いことです。しかし、現状を受け入れず「何とかしなければ」と無理をしても、同じことを繰り返してしまいます。自分の課題に気づき、等身大の自分として受け入れることで、今何をすれば改善に向かうのかが見えてきます。
また、分析の過程で、課題だけでなく自分の強み(=長所、得意なこと)が見えてきます。課題と合わせて自分の強みも認めることができれば、社会復帰後の進路や働き方を考えるヒントになります。
自分の疾病を周囲に伝えていこう
課題と強みに気づいた上でさらに一歩前に進むためには、周囲の人にも自分を理解してもらうことが大切です。ここでいう周囲とは、自分をサポートしてくれる人であり、接する人全員ではありません。
具体例で考えてみましょう。
主治医:自分の症状と課題を正確に知ってもらうことで、適切な診断や処方につながる。
家族/友人/パートナー:症状の変化を知ってもらうことで、距離感や接し方を相談できる。
職場:何にストレスを感じているか、逆に何が強みなのかを把握してもらうことで社会復帰後の働き方が相談できる。
周囲に自分のことを知ってもらうコミュニケーションは、安全に社会復帰を果たす準備だけでなく、社会復帰後も継続する必要があります。仮に同じ環境でも、月日と共に接する人は変わっていくものです。その都度自分のことを知ってもらうことで、強みを活かして仕事の成果を出したり、課題を開示することで信頼関係を築きながら自分らしさを大切にした生活が送れます。
いかがでしたでしょうか?
疾病理解では、ありのままの自分を捉え、周囲に発信できるようになる準備をサポートをしています。ただ、周囲に自分の疾病を伝えるのはなかなか難しいと感じると思います。そこでビューズでは、自分の症状や課題、自分なりの対策をまとめた資料を「自分の取扱説明書」と呼び、ビューズ卒業までに作成するよう支援しています。疾病理解は全6回のプログラムで構成されており、一通り参加することで「自分の取扱説明書」のベースができるような内容にしています。
各回の具体的な内容については、また別途ブログなどでご紹介していきます。