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周囲/当事者の方へ

2024/05/31

双極性障害Ⅱ型についての理解と適切な接し方

双極性障害Ⅱ型は、気分が高揚している軽躁状態と、その対照的なうつ状態が交互に現れる、一般にはあまり知られていませんが実際には比較的よく見られる精神疾患です。この症状を持つ方々の実体験をもとに、効果的なコミュニケーションと適切な接し方を紹介しています。この記事では、それらの具体的な方法を解説します。

双極性障害Ⅱ型の基本的な理解

双極性障害には主にⅠ型とⅡ型の二つのタイプが存在し、これらは気分の波が特徴ですが、その表れ方には明確な違いがあります。

双極性障害Ⅰ型は、非常に高い気分の高揚を示す重度な躁状態と、深いうつ状態を繰り返します。この型では、うつ状態の期間が比較的短いことが一般的です。

一方で、双極性障害Ⅱ型では、軽躁状態が特徴です。軽躁状態は完全な躁状態ほど極端ではなく、活動的かつ楽観的な状態が特徴です。また、Ⅱ型におけるうつ状態はより長期間にわたって持続する傾向があります。

これらの違いを理解することは、双極性障害の当事者への適切なサポートと対応を提供する上で非常に重要です。

双極性障害Ⅱ型の軽躁状態とうつ状態における主な言動

軽躁状態時の主な言動

  • 楽観的な発言が多くなる
  • 新しいアイデアが次々と浮かぶ
  • 通常よりも社交的で話し好き
  • 睡眠時間が少なくても活動的
  • 時には衝動的な決断を下す

うつ状態時の主な言動

  • 深い悲しみや無力感から活動できなくなってしまう
  • 社会的な活動や友人との交流から遠ざかる
  • 興味や喜びを感じることが少なくなる
  • 睡眠や食欲に問題が生じる
  • 自己評価が極端に低下する

効果的なコミュニケーション方法

双極性障害Ⅱ型の人とのコミュニケーションでは、その人の現在の精神状態を理解し、状態に合った接し方をしてあげることが重要です。軽躁状態とうつ状態では、話しかけるタイミングとアプローチが異なります。軽躁状態では、元気で社交的であるため、コミュニケーションを取りやすい一方で、うつ状態では、引きこもりがちで閉じこもる傾向があるため、話しかけるタイミングに配慮が必要です。

軽躁状態のコミュニケーション方法

軽躁状態では、その人のアイデアや計画に対して現実的なフィードバックを提供することが重要です。気分が高まっている時には、その情熱を否定せず、しかし実現可能な範囲での支持を示すことが効果的です。もし現実的ではない話題になった場合には、「面白い考えだけど、もう少し具体的なステップを考えてみようか?」と提案することで、話を現実的な方向に導くことができます。

うつ状態のコミュニケーション方法

うつ状態の時は、非難や批判を避け、支持と理解を示すことが特に重要です。静かで穏やかな声で話しかけ、本人の感情を優しく認め、「辛いだろうね」と共感を示すことで、心の支えになります。無理に活動を促すのではなく、その人のペースに合わせて接することが大切です。

軽躁状態とうつ状態でのコミュニケーションのポイント

軽躁状態

  • 情熱を肯定するが、現実的なフィードバックを提供
  • 過度な計画やリスクの高い行動を穏やかに修正
  • 明るく前向きな対応を心がける

うつ状態

  • 非難や批判を避け、共感と支持を示す
  • 話すペースやトピックに配慮
  • 感情の表現を尊重し、安心感を提供

このようなアプローチを通じて、双極性障害Ⅱ型の人々の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを実現することができます。

支援する際の注意点

双極性障害Ⅱ型の人を支援する際には、彼らの自己決定を尊重することが重要です。無理なアドバイスや解決策を押し付けることなく、その人自身が望むサポートを提供することが求められます。また、支援者自身の感情や健康も大切にし、適切な境界線を設定することが必要です。たとえば、支援者は、自分の時間を確保し、相手に対する責任感が過剰にならないようにする必要があります。

支援する側が経験する可能性のある「支援疲れ」を防ぐためには、定期的に自己ケアの時間を設け、リフレッシュすることが大切です。また、感情的な負担が大きくなった場合には、カウンセリングや診察に同席して主治医に同席することが助けになります。

専門家としては、精神科医、カウンセラー、社会復帰支援サービスの専門家などが含まれます。これらの専門家は、症状の管理、適切な治療計画の立案、日常生活の調整支援を行うことで、双極性障害のある人々のサポートを行います。特に社会復帰支援サービスは、職業的な支援や日常生活のスキル向上のためのプログラムを提供し、社会との再接続を助ける重要な役割を果たします。

過度の介入を避けるためには、支援がその人の自立を助け、促すものであるかどうかを常に自問自答することが重要です。相手が自らの選択をする機会を保持し、それを支援する方法を見極めることが、依存ではなく、自立を促すサポートを提供する鍵となります。

環境の整備

双極性障害Ⅱ型の人々にとって、安心して過ごせる環境を整えることは、症状の管理に大きな影響を及ぼします。ストレスを最小限に抑え、規則正しい生活リズムを促すために、静かで落ち着いた空間を提供することが重要です。具体的には、明るすぎない柔らかい照明、静かな背景音楽や、視覚的な混雑を避けたシンプルな室内環境が効果的です。以下では、一人暮らしの場合と家族と同居する場合に、それぞれどのように環境を整えるかについて説明します。

一人暮らしの場合

個人が好みに合わせて、リラクゼーションに必要な要素を自由に取り入れることができます。
日々の生活が一定のリズムで進むように、食事、睡眠、活動の時間を一定に保つことが重要です。

家族と同居する場合

家族全員が理解を持ち、共有スペースでは静かな環境を維持してあげましょう。
同居する家族に対し、状態に応じたプライバシーの尊重と、安心できるサポートが必要です。
規則正しい生活リズムを促すためには、毎日同じ時間に起床し、就寝すること、食事の時間を一定に保ち、バランスの良い食事をとること、定期的な運動や休息の時間を設けることが含まれます。

躁状態とうつ状態では、環境整備のアプローチに違いがあります。躁状態では、夜間に部屋の照明を落とすことや穏やかな音楽を選ぶことで、過剰な興奮を抑制することが効果的です。一方、うつ状態では、基本的には安心できる静かな空間を維持しつつ、心地よいと感じる要素を取り入れることが望ましいです。

専門家の助けを借りる意義

双極性障害Ⅱ型は、単独で自然に治る病気ではありません。この病状は長く付き合っていく必要であり、専門家の助けを受けることが治療の成功には不可欠です。医師やカウンセラー、そして社会復帰支援サービスの専門家との連携を通じて、定期的な診断と治療計画の調整が行われます。

専門家に相談するべきタイミングにはいくつかの兆候があります。たとえば、気分の変動が日常生活に影響を与え始めた時、感情がコントロールできなくなった感じがする時、または自己管理が困難になってきた場合などです。これらは専門的なサポートが必要なサインとなり得ます。

双極性障害Ⅱ型は、完治する病気ではありませんが、適切なサポートと治療計画により症状は大幅に軽減され、日常生活・社会生活を送るようになることが可能です。症状の管理と患者自身の自己認識の向上には、専門家との継続的な関わりが重要となります。

双極性障害Ⅱ型を克服した体験談

双極性障害Ⅱ型を経験し克服した方の体験談をお伝えします。この体験談を通じて、双極性障害Ⅱ型にどう向き合い、どのようにして克服してきたのかのご紹介します。

Q.双極性障害Ⅱ型の診断を受けた時の感情や反応について教えてください。
A.小学生の時から気分に波のようなものがあることは漠然と気づいていましたが、診断を受けたのは社会人になってからでした。医師から双極性障害Ⅱ型と告げられた時には、驚きもありましたが、やっぱり理由があったんだという、今までの症状へ納得する気持ちが大きかったです。

Q.日常生活の中で双極性障害Ⅱ型の症状がどのように表れるか、具体的な例を挙げて説明していただけますか?
A.落ち込んでいるときに、実際に起こってはいない不安な想像をしてしまったり、相手の感情の責任が自分にある(例:●●さんが怒っているのは私のせいかも)かのように感じていました。

Q.治療や管理の過程で特に役立ったアプローチや方法はありますか?
A.自分にとって小さな負荷となる行動を書き出し、体調に合わせて行動量を調整することで、1日の活動量を増やしていくことができました。

Q.家族や友人との関係において、双極性障害Ⅱ型がどのような影響を与えましたか?
A.時に強い言い方をしてしまったり、落ち込みが強いときは交流する気力を持つことができませんでした。

Q.双極性障害Ⅱ型を持つことに対する周囲の理解やサポートについてどのように感じていますか?
A.症状や悩みを開示する勇気がもてず、なかなかサポートを求めることが出来なかったなと思います。

Q.一番しんどかったこと、その状況をどのように乗り越えたかを教えてください。
A.軽躁状態の時にはやりたい事が沢山出てきてしまうので、優先順位を立てるのが大変でした。特に、引っ越し、子どもの幼稚園卒業準備、自分の復職準備が重なった際には、予定がびっしり埋まってしまい寝る時間も足りなくなるほどでした。そこで支援員さんに相談し、優先度と重要度を分けてやる事の整理を手伝ってもらいました。次第に自分でもやる事・やらなくて良い事の判断がつけられるようになり、自分なりに工夫して予定調整が行えるようになりました。

Q.双極性障害Ⅱ型の症状に対処するために日々行っていることはありますか?
A.自身の気分の波を把握するために、セルフモニタリングを続けています。

Q.双極性障害Ⅱ型を公に話すことについてどのような考えを持っていますか?その理由も教えてください。
A.全ての人にわかって貰おうという考えを持つと、どうしても分かってもらえない人もいるので苦しくなってしまいます。私は不特定多数の方に双極性障害Ⅱ型であることを話したいとはあまり思っていません。しかし、自分の周囲を取り巻く方々のうち、自分を助けてくれる方や一緒に働く方々には症状や対処法をお伝えしたいです。詳しく知ってもらえることで、お互いに信頼し合える関係性を築いていけるのではと思っています。

Q.他の双極性障害Ⅱ型を持つ人々やその家族に向けてアドバイスがあればお聞かせください。
A.自分や、子供の生活を見守ってくれるサポート資源を開拓することです。具体的には、同じマンションに住むシングルマザーの親子や、階下にオフィスを構える支援団体など、日常生活で頼れる先を増やしていくことです。

Q.今後、双極性障害Ⅱ型の治療やサポートに何を望んでいますか?
A.自身の症状を開示した上で、今後のキャリアアップやスキルについて検討できる相談先が欲しいです。

本サイトでは卒業生のインタビュー記事を掲載しております。
通い始めたきっかけからプログラムの感想、参加してよかったことまで、たくさんのお話を聞かせてくれました。

まとめ

この記事では、双極性障害Ⅱ型の理解と効果的な支援方法に焦点を当てました。双極性障害Ⅱ型は躁状態とうつ状態が交互に現れる精神疾患で、それぞれの状態に応じた適切な対応が必要です。効果的なコミュニケーション、適切な環境の整備、そして専門家によるサポートが患者の生活品質向上に不可欠です。特に、患者の自立を支援するバランスの取れたアプローチが求められます。また、症状と上手く付き合っていくよう促しながら社会復帰を支援するため、専門家との連携が重要です。これにより、双極性障害Ⅱ型の人々がより良い未来に近づく支援が可能となります。

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