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周囲/当事者の方へ

2024/09/12

復職か退職かを決めるのが難しい理由-ビューズの意思決定支援の紹介-

休職期間が終わりに近づくと、元の職場に戻るべきか、それとも退職すべきかの決断が迫られます。しかし、「元の職場に戻ってもまたうまくいかないかもしれない」という恐れが、復職への一歩を踏み出すことを躊躇させます。一方で、「退職したら社会から取り残されてしまう」という不安が、退職を決断することを妨げます。これらのネガティブな思考が交錯し、どちらの選択肢も選べない状況に陥ることがあります。

休職→復職→再休職を繰り返す背景

退職するか復職するかを深く考えて検討しないまま復職する決断をしてしまうと、ネガティブな思考の交錯が残ってしまい、結果的に休職と復職を繰り返してしまうことがあります。このサイクルに入ると、職場復帰を果たしても、再びストレスやプレッシャーを感じ、再度休職することになりかねません。「また失敗するかもしれない」という思考が、復職のたびに心を重くし、再発率をさらに高めてしまうのです。

意思決定に影響を与える要因とは?

うつ病で悩む方が認知のゆがみに影響を与える要因として、①認知のゆがみ②回避という2つがあります。

  • 認知のゆがみ:思考が偏り、現実を正しく捉えられなくなる心理的な現象を指します。
  • 回避:ストレスや不安、恐怖を感じる状況や活動を避ける行動パターンのことを指します。回避行動は一時的には不快な感情やストレスから逃れる手段として機能しますが、長期的にはうつ病の症状を悪化させる要因となることがあります。

それぞれが意思決定にどのように影響を与えるのか、事例を用いて説明します。

認知のゆがみが退職の決断に与える影響

以下に、代表的な認知のゆがみと、退職に与える影響を事例で説明します。

全か無か思考

物事を完全に良いか悪いかで考えてしまい、中間の選択肢を見逃してしまうこと。

事例: Aさんは、自分が常に完璧に仕事をこなせない限り、それは「失敗だ」と感じています。たとえ部分的に成功しても、些細なミスがあれば全体が無駄だったと思い込んでしまいます。「体調は悪いが、復職しなければ家族が養えなくなるので復職するしかない」と極端な思考に囚われ、退職を考えつつも行動に移せず、いつまでも悩み続けています。

一般化のしすぎ

一つの出来事から「いつもこうだ」と、全体に当てはめてしまう考え方。

事例: Bさんは、前回の転職活動で苦労した経験から、「前の転職活動も大変だったのに、今の体調で行ったら余計にしんどくなって失敗するだろう」と考えてしまい、退職をためらっています。

心のフィルター

物事の一側面にだけ目を向けてしまう傾向。ネガティブな面に意識を向けがちな傾向として説明されることが多いが、ポジティブな面にだけ意識を向けてしまう場合でも偏りとなる。

事例: Cさんは、現職は長時間労働で自分のライフスタイルに合わないとどこかで感じつつも、「同僚はいい人達だから辞めない方がいいかな」というポジティブな面を根拠に、退職をためらっています。

ポジティブを打ち消す

ポジティブな出来事があっても、「たまたまうまくいっただけ」と自分の成功を否定してしまう。

事例: Dさんは、休職する前に実績を残していた時期がありました。しかし、「たまたま上手くいっただけで、自分の実力ではない」と考え、今の職場を退職することをためらってしまいます。

結論の飛躍

十分な根拠がないまま、「こうに違いない」と結論を急いでしまうこと。

事例: Eさんは、退職を検討しつつも、業界や転職してみたい企業の具体的な調査をせずに「今の業界はどこも厳しいと聞くから、転職しても結局今と同じ問題に直面するだろう」と考え、退職をためらっています。

拡大解釈と過小評価

物事を必要以上に大きく捉えたり、逆に過小評価してしまう思考。

事例: Fさんは、自己評価が低く、「自分のスキルでは、転職してももっと悪い条件の仕事しか見つからないに違いない」と自分の市場価値を過小評価してしまい、退職ではなく現在の職場に居続ける理由を作ってしまいます。

感情優先の決めつけ

一時的な感情に基づいて結論を出してしまうこと。

事例: Gさんは、「今の職場では少し楽な部分もあるし、今のままが一番安全だ」と考え、一時的な安心感や慣れを優先し、今の職場で感じているストレスの振り返りを経た現実的な判断をせず、退職の意思を伝えられません。

~すべき思考

「~すべきだ」「~でなければならない」と、ルールに縛られた考え方。

事例: Hさんは、「ここまで頑張ってきたのだから、退職せずに最後まで責任を全うすべきだ」と考え、自分に厳しいルールを課しています。このため、退職という選択肢を考えること自体が悪いことだと感じ、踏み出せずにいます。

レッテル貼り

「私はダメだ」「あの人は失敗者だ」と、レッテルを貼ってしまうこと。

事例: Iさんは、「自分は社会に適応できないダメな人間だから、退職しても何も変わらない」と決めつけ、自分を過度に否定しています。このため、退職の一歩を踏み出すことができず、現状に留まっています。

個人化

自分の力ではどうにもならないことを、「全部自分の責任だ」と考えてしまうこと。

事例: Jさんは、「私が辞めたら、同僚が困るかもしれないし、会社にも迷惑がかかる」と考え自分に責任を引き寄せすぎてしまい、転職の決断ができません。

これらの認知のゆがみによって、うつ病の人はしばしば現実を正しく捉えることが難しくなり、結果的に重要な判断を下すことが困難になります。

回避が退職の意思決定に与える影響

退職にせよ復職にせよ、自分の意思決定をすることで先の未来が決定します。

最終的に未来はどうなるか分かりません。まして、仕事を変えるかどうかは人生の1つの転機にもなりえます。ポジティブな想像よりも、「本当にうまくいくだろうか?」という恐怖の方が先に来てしまうものです。その恐怖に比べれば、決めずにいる状態の方がまだ負荷が軽く感じると思います。

しかし、決めずにいる状態が続き、自分がどうしていきたいかを深く考えることを後回しにすると、現実的にどうしていくかの材料を作れないため、結果的に認知のゆがみの例にあるような考えに支配されやすくなりやすくなってしまいます。

事例:Kさんは休職中で、「症状が重い時はすぐに意思決定をしない方がいい」という主治医のアドバイスを受け、意思決定を保留していました。症状は徐々に回復してきましたが、過去の体験から将来にプラスのイメージが描けず、「復職してもしなくても上手くいく気がしない」という漠然とした不安が残っていました。「仕事」などのキーワードを聞くのも避けるようになり、日常生活は維持していたものの、次のステップに進むための行動を決められないまま、同じ生活を続けていました。

不安感が強く回避が続いている時に、自分一人で向き合うことは困難です。

まずは治療に専念し、判断はサポートを受けながら行う

こうした状況においては、まずはうつ病の治療に専念することが最も重要です。認知のゆがみが改善されるまでは、自分一人で大きな決断を下すのは難しいでしょう。そのため、専門家のサポートを受けながら、適切なタイミングで判断を行うことが求められます。カウンセリングや認知行動療法を通じて、偏った思考を修正し、より現実的でポジティブな視点を持つことが可能になります。

また、家族や信頼できる友人、生活訓練施設の支援員など、第三者の意見を取り入れることも有効です。例えば、復職か退職かを判断するためのやり方として、メリット・デメリットを分析する方法があります。このやり方のポイントは、メリット・事実を根拠として上げていくことですが、認知のゆがみが邪魔をし、「迷惑をかけているのだから復職しなくてはいけない」という考え方を根拠としてあげてしまうことがあります。ここで第3者からの客観的な視点を得て、認知のゆがみに気づき、ストレスに感じるプロセスを事実に基づいて振り返り根拠を上げることができます。また、この話し合いのプロセスが、回避せずに向き合うことをサポートしています。1人では向き合うのが辛い事でも、支援員と2人3脚で話し合い、冷静に自分の望む意思決定ができるよう後押しします。

退職後のサポート

もし退職を選んだ場合、退職後の生活設計や再就職に向けた準備を進めることが必要です。地域の生活訓練施設(復職・再就職支援センターなど)や職業訓練プログラムを利用することで、新しいキャリアを見つける手助けになります。退職後の生活費の計画や、利用できる支援制度についても確認しておくと、安心して次のステップに進むことができます。退職後のサポートの詳細については、次回のブログで詳しくご紹介していきます。

実際に、ビューズに通所しながらこのプロセスを経て退職を決意した方がいます。彼はどのようにして決断に至り、どのようなサポートを受けたのでしょうか。こちらの具体的な事例も、来月以降にブログで投稿していきます。

まとめ

うつ病に伴う認知のゆがみは、職場復帰か退職かの決断を難しくする大きな要因です。しかし、まずは治療に専念し、適切なサポートを受けることで、このゆがみを修正し、最適な判断を下すことが可能になります。どちらの道を選ぶにしても、健康を最優先に考え、自分を取り戻すことが最も大切です。

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