うつ病等の気分障害は、心と体に症状が現れます。理由もなく気分が落ち込んだり、夜に眠れなくなったり、目の前の仕事に集中できなくなったりと、その症状は様々です。日常生活・社会生活に支障が生じ、職場を休職するということもよくあります。
休職中は大きな不安が付きまといます。
「自分は本当に回復して復職できるのだろうか」
「休んでいる間はどのように過ごせばいいのか」
様々な不安を抱える方がいます。加えて、職場側とのやり取りに多くの方が負荷を感じ、心身の負担になります。迷惑をかけているという罪悪感がある一方で、職場でのストレスが発症要因になっている場合には職場と連絡を取ることそのものが辛いということもあります。
ビューズ@名駅の復職支援は、本人の回復や再発予防のためのプログラム提供に加え、職場側とのやり取りもサポートします。今回は、職場側とどのような関わりをしているのか、通所の段階ごとに分け、実例を交えてご紹介します。
通所初期は、まだ症状に大きな波があり、自分が休職に至った要因や解決する問題を整理できていないことが多いです。復職の時期を考えられる段階でない中、職場側と何を話し合えばいいのでしょうか?
職場側の立場から考えると、まず「そもそもビューズ@名駅(生活訓練)って何?」という疑問が浮かぶと思います。どんな支援をしているのか、本当に復職に向けて役立つのか。通所している本人は体感できても、それを職場側に分かるように説明するのはとても難しいと思います。
また、職場としては復職までの見通しが欲しい所です。見通しと言うのは、復職する時期だけではなく、症状がどのように回復していくのか、どうすれば復職できるのかという道筋も含みます。復職時期を確約はできなくても、道筋と回復している実績が見えていれば職場も安心して見守ることができます。
事例①:20代男性。大学卒業後から働いている職場で、異動をきっかけに発症。心療内科の主治医からビューズ@名駅を紹介され、通所を始めて3カ月が経ったころに職場から状況確認の連絡が来た。どう返信すればいいのか迷いにスタッフに相談した所、職場に同行訪問し、今後の見通しについて共有することになった。事前に話し合う内容を相談した上で、支援計画書とビューズの資料を持って職場に訪問。支援員からビューズについて端的に説明をしてもらい、支援計画書を一緒に見ながら、目標にしていること、今取り組んでいること、今後どうしていくのかを話し合った。そして、今は定期的な連絡が負荷になるので、職場に対して本人からの連絡を保留してもらえるよう支援員から提案し、承諾いただいた。その結果、気が楽になり、自分の回復と発症した要因の振り返りに専念できるようになった。
通所を継続していく中で本人の状態は徐々に回復し、自分が発症に至った要因が徐々に見えてきます。大きく分けて、個人要因(本人の苦手に感じていること、ストレスを抱えやすい考え方・行動)と環境要因(仕事内容との相性、業務量の多さ、対人関係など)がありますが、辛さの渦中にいるときは「自分がすべて悪い」「職場がすべて悪い」と極端に考えがちです。しかし、実際には片方だけが要因となるケースはあまり多くなく、混ざり合っていることがほとんどです。ビューズでは、事実を元に要因の振り返りを行い、個人要因に対しては、本人が復職のために改善できるようなトレーニングの機会を提供します。それと同時に、職場でどのようなストレスや問題を抱えていたのか、どのような配慮があれば続けやすいのか環境要因についても考えます。
とはいえ、発症に至った要因を職場に伝えるのはとても勇気がいることです。職場への批判と取られる可能性や、過去を思い出して自分を責めてしまう可能性が頭をよぎり、ためらってしまうのは自然だからです。ビューズ@名駅では、本人や職場からの求めに応じて、途中経過の共有のための同行支援も行っています。
事例②:40代女性。職場を休職して1年、ビューズに通い始めて8カ月になり、大分状態は安定し、自分の苦手なことも分かってきた。復職が現実的な目標になっていくにつれ、復職後の働き方を職場へどのように伝えればいいのかを迷い、支援員に相談。「現状の共有と復職後の働き方について会社に相談するいい機会である」とアドバイスをもらい、職場に同行してもらうことになった。事前にビューズへの通所実績(月に何日通所できているか)や発症要因、現状考えている対応策と配慮してもらいたいことを書き出しておくなどの準備を行い、当日を迎えた。自分が主体で話しつつも、支援員にトレーニングの意図や配慮が必要な背景を補足してもらえた。職場側からは、症状に関する質問や働き方のアドバイスについてを支援員に要望があり、過去の事例などを交えて説明してもらった。職場側が求める復職の条件や配慮についても共有され、今後は定期的に面談を行うことになった。不安な気持ちもあるが、職場側の考えが分かって少し安心した。
症状が回復し、発症要因が整理され、個人要因へのトレーニングと環境要因について復職後の働き方の相談が進んだら、いよいよ復職です。ビューズでは、通所を通して得られた取り組みの効果や再発予防の対処法を「自分の取扱説明書」としてまとめること、可能であればそれを職場に共有することを推奨しています。アウトプット資料があることで、職場側にどれくらい回復できているのか、どれくらい対処法が確立されているのか、どのような配慮が必要なのかが伝わりやすくなり、できること・できないことについて率直に話し合うことができます。
ただ、いくら準備や対策をしても、不安がなくなることはありません。ビューズ@名駅では、卒業前の最後の打ち合わせにも必要に応じて同行し、復職後、どのようにフォローしていくのかを一緒に考えていきます。
事例③:30代男性。1年2カ月の休職の間、ビューズに通って自分の苦手なコミュニケーションのトレーニングを行い、職場側と復職後の残業規制や段階的に仕事量を増やすことなどを話し合った。しかし、職場側に取扱説明書を提出したものの、本当に自分は上司とコミュニケーションを取りながらやっていけるのかという不安が残っていた。支援員に相談した所、職場のできること、ビューズの出来ることを共有し、整理するようにアドバイスをもらった。そこで、上司に状況の共有と相談が出来るような日報を作成し、実際に上司に見せながらどう使っていくのかを相談することになった。同行もできると支援員に言われたが、しっかり準備ができたので今回はあえて断り、1人で職場に相談をした。その結果、上司の負担を考慮し、日報ではなく週報と言う形で運用することになった。自分で相談できたことが自信になり、少しずつ不安を和らげている。
いかがでしたでしょうか。
復職するまでには多くの不安が伴うものですが、ビューズでは休職中の方を様々な形でサポートしており、職場側とのやり取りも積極的に行っております。同行支援の例も紹介しましたが、その一方で、卒業後のことを考えると、ご本人が職場側と相談できるようになっていることが大切だと思います。どうすれば相手に伝わりやすくなるのか、個別相談に応じることに加え、集団プログラムの中でも練習を通してスキルとして身に着けることもできます。支援員の同行は徐々に減らし、自分で復職の相談ができたという自信につながれば、1つ、また1つと再発のリスクは下がります。
道のりは長く感じられるかもしれませんが、ご本人と職場の双方が安心して復職が出来るよう支援を行います。復職への不安を抱えている方は、まずはビューズにご相談下さい。
また、そもそもの話として、復職した方が良いのか悩んでいる方もいらっしゃると思います。退職という選択肢が頭に浮かびつつも、その決断にも不安が付きまといます。次回のブログでは、退職か復職か悩む方にどのような支援を行っているのか、また事例を交えてお伝えします。