12/19(火)に大府もちのき特別支援学校桃花校舎にて、ビューズスタッフが講師として研修を行いました。
知的障害の児童生徒が通う学校で、今回実施した桃花校舎では、知的障害の程度が比較的軽く、中学校もしくは特別支援学校の中学部を卒業した方が通われています。
今回、研修のご依頼をいただいた際に、大府もちのき特別支援学校桃花校舎に通っていた生徒が卒業し就労した後も人間関係で躓くことが多く、特に自己表現が苦手でなかなか悩みを開示できないことが課題だと伺いました。ビューズが就労準備および就労後の支援をしていることから、「学校での在学中にどのような支援をしていくといいか?」「どこに力点を置くと良いか?」という視点で研修をしてほしいとリクエストをいただき、お受けいたしました。
教職員に向けて、先生方が生徒に指導する際に実践しやすいよう、「相談カード」というツールを準備し、まずは先生方自身に生徒目線に立って体験していただくことを研修の主眼に置きました。 今回のブログでは、研修の内容とその背景となるビューズでの取り組みを合わせてご紹介します。
相談のきっかけは感情
ところで、誰かに相談するために最初に必要なことは必要でしょうか?
言葉にしようとすると、意外と難しいと思います。
すべての始まりは、自分が困っていることを自覚することです。
そして、困っていることを自覚するためには、感情に気づく必要があります。なぜなら、落ち込み、不安、焦り、イライラなどの感情は、ストレスに気づくためのアラームだからです。
しかし、自分の感情を自覚するのは、たとえ大人であっても難しいことです。
そこでビューズでは、感情に気づく練習のために、感情のリストを配布しています。例えば、集団認知行動療法というプログラムでは、ストレスを感じた場面を書き出し、その場面にどのような感情が伴っているかを選ぶ練習をしています。これを繰り返すことで、ストレスを早めにキャッチし、早めに対処することができるようになります。
ストレスの早期発見・早期対処は、うつ病の発症や再発を防ぐために何よりも大切なことです。
相談カードの構成
今回の研修で使った相談カードは、以下の順番で自分の困ったことを伝えるようにしています。
①起きたこと
②どう思ったか
③聞きたいこと
平易な言葉にしておりますが、①=事実、②=感情、③=相談内容と置き換えることができます。
実は、これは実社会においてよく使われる「報連相」とリンクします。
報連相の定義は、それぞれ以下の通りです。
報告=事実
連絡=事実+感情・思考
相談=事実+感情・思考+相談内容≒問題解決
つまり、①~③を順番に報告することで、結果的に相談ができるような仕掛けにしました。
報連相の実践に向けて
報連相の定義を言葉にすると単純ですが、実践するとなると意外と難しいものです。
感情をとらえて言葉にすることも練習が必要ですし、事実と感情を分けて整理することも慣れが必要です。ビューズでは、先ほど紹介した集団認知行動療法というプログラム以外でも、報連相の練習ができるプログラムや仕組みを準備しています。
例えば、対人関係グループワークでアサーションというスキルをロールプレイで練習しています。自分も相手も大切にする自己表現の方法ですが、基本の枠組みは事実→感情→伝えたいこと、の順番で伝える流れになっています。また、利用者が支援員に面談を申し込む際に、事前に相談したいことをまとめていただいていますが、事実、感情、相談内容を分けて書き出します。
報連相しやすさは相手によって変わる?
ところで、「苦手な人には報連相したくない」と感じる方がいるのではないのでしょうか?苦手に感じる理由は人それぞれですが、自分の気持ちや思っていることを伝えたらネガティブな反応をされた、という体験が背景にあると思います。
しかし、そこで報連相をやめてしまうと、自分で抱えることがどんどんと増えてしまいます。例えば、仕事の中では上司を含めた周囲に自分の進捗を報告する必要がありますが、避けてしまえば上司は「報告がないから大丈夫なのだろう」と考え、手を差し伸べてもらえる機会を失います。結果、納期に間に合わないことが直前にわかってやむを得ず報告した際、「どうしてもっと早く報告しなかったのか」と指摘され、気持ちは落ち込み自信も失ってしまいます。
では、苦手な人とは逆に、報告しやすい人は、どんな人でしょうか?
その人は、仕事の話以外にも気軽に会話ができる人ではないでしょうか?
ちょっとした合間にコミュニケーションをとり、関係性ができてくると「この人に話してみよう」と自然に思えるようになります。このように、伝え方ももちろん重要ですが、ベースとなる関係づくりがその後の相談にも大きく影響します。ここまでくれば、相手の要因ではなく、自分でできる対応によって、状況を変えていけると気づくと思います。ビューズでは、関係づくりを促進する3Dコミュニケーションというプログラムも準備し、自己紹介から始めとするコミュニケーションへの苦手意識の軽減をサポートしています。
実際の研修時の様子
研修では、相談カードを使って先生方に日ごろのストレスを書き出し、先生同士で共有してアドバイスをしあう機会を作りました。活発に話し合う様子も見え、感情のリストから選ぶという発想にも興味を持っていただいている様子でした。
まとめ
いかがだったでしょうか?研修内容が大府もちのき特別支援学校の先生方に役立つ機会になっていれば何よりです。ただ、子供に限らず大人であっても報連相は難しく、また奥が深いものなので、世代に関わらず全員が練習していく必要があるものです。ビューズの卒業生でも、ビューズの通所中に報連相や関係づくりのコミュニケーションを繰り返し練習した方ほど、結果的に社会復帰後に新しい環境でも再発予防をしながら続けられております。 今回のブログの内容を参考に、ぜひ日頃のコミュニケーションに取り入れてみてくださいね。