ビューズは生活訓練として社会復帰支援を行っており、復職・再就職のサポートも行っています。
今回は、復職支援の実績と、事例をもとに復職支援のプロセスをご紹介します。
【ビューズの復職支援の実績】
・ビューズ卒業生全体の約65%が復職・再就職につながり、うち半分以上が復職。
・実数:令和4年10月~令和5度10月で、10名の方が復職。
・6か月継続時点での就労継続率は10/10(100%)。(昨年度は8/9(88%)。
・就労開始後から3年間半時点の就労継続率は90%。
上記の数字の内、何人復職したかという実数に目が行きがちになりますが、ビューズでは就労継続率、つまり社会復帰後も再発を予防しながら働き続けられることをより重視しています。
復職支援に携わっていると、多くの方が復職期限や会社から提示される条件に「早く応えなければ」と焦っていることに気づきます。働けていないことへの罪悪感ばかりが高まってしまい、焦って気持ちが休まらないのは自然なことです。
しかし、この焦りに負けず、じっくりと再発予防のために取り組めるように支援するのがビューズの役割であり、単純に復職できたから良いという判断をしていません。
それでは、事例を見ながら、復職し働き続ける上で大事なポイントを見ていきましょう。
モデル事例 :40代女性。 仕事を完璧にこなさなければ気が済まず、周囲に頼ることが苦手で仕事を抱えがちになり、心身の不調が生じ、うつ病と診断されて休職に至った。自宅療養を勧められたが、適切な休み方が分からず、逆に早く復職しなければとがむしゃらに頑張ってしまい、体が悲鳴を上げて生活リズムが崩れる、ということを繰り返していた。職場の産業医に現状を伝えても復職の許可が降りず、「どうすれば症状から回復するのか」「回復した上で再度体調が悪化することを防げるのか」と自問自答するも答えは見つからず、気持ちばかり急いてイライラしたり、涙が止まらなくなることもあった。職場の保健師から復職支援を受けるように勧められ、いくつかの施設を見学した上で、ビューズの利用を決めた。
ビューズでの支援経過:ビューズに通うとは決めたものの、長く通うことは想定しておらず、少しでも早く復職しようと毎日できるだけ早い時間から通い、プログラムにも積極的に出席した。しかし、体調がついてこず、通所できなくなるという過去のパターンを繰り返してしまった。支援員と相談した所、「自己理解を深め、発症に至った課題を見つけた上で、対処法が確かめておかないと、苦しい状況がまたやってくる」と言われ、ショックも受けたが、一度立ち返って考えなければ回復できないと思った。まず、自分の生活と気分・体調を記録し、今の自分にとって適度な負荷を確認した。結果、病気の症状の波だけでなく、些細なストレスなどで気分・体調が左右されることに気づいた。自分のことを深く理解をするには想定以上の時間がかかることが分かった。また、自己理解系のプログラムに出ることで、自分の課題(※1)/傾向(※2)客観的に見てもらい、更に自分の気づけなかった課題もメンバーさんたちに教えてもらうことで、自分が何で躓いたのか受け入れられた。
※1 課題の定義:考え方の癖・心身に影響を及ぼす根本原因
※2 傾向の定義:気分の上下に影響しやすいきっかけ
状態が安定するにつれて、職場復帰後を想定したビジネス系のプログラムにも参加できるようになった。最初は仕事のイメージが沸き辛かったが、仕事の進め方を振り返り次回に改善策を試すことを覚え、成長を確かめられるようになるにつれて「前進している」という安心感を得られるようになってきた。仕事を抱え込んでしまう癖については、相談する基準を設定(できたことをこまめに報告する、悩んで止まったときはすぐに連絡・相談する)し、何度も支援員と報連相する時間を作ることで、徐々に相談のメリットを感じられるようになってきた。更に、「自分はなぜ復職したいのか?」と改めて問い直すために、キャリア系プログラムを受けたり、他にも復職か転職かを迷っている人の体験談を聞く機会を作った。結果、やっぱり人と接することが好きで、役に立ちたいという気持ちが強いことを再確認でき、復職したいという気持ちが固まった。職場復帰前には、自分の課題/傾向や対策をまとめた「自分の取扱説明書」を作成することができ、職場の人にも共有して復職後のサポート体制を話し合うことで、安心材料となった。
卒業時のコメント:自分自身について深く考える時間は今まで無かった。自分の個性や考え方の癖を知ることで、自分を大切にしようと心から思えた。以前は「あれもしなければ、これもしなければ」「これもできていない、あれもできていない」という思考が頭の中を占めていたが、 「まぁ、いっか」「これができたから大丈夫」という考え方ができるようになった。また、相談することのメリットや手段が増えたことでハードルが下がり、問題を抱え込まなくなった。それと、今の自分が好きだと思えるようになった。
今回の事例では、復職後にも勤務を続ける上で、以下の4つのポイントを押さえています。
- 自分の現状を受け入れ、考え方の癖を受け止めた上で緩めることができたこと。
- 報連相について、本人がメリットを感じられるまで繰り返し練習できたこと。
- 自分の大切にしたいことに気づいた上で、復職の意思決定ができたこと。
- 職場に自分取扱説明書を共有することで、理解を得られたうえで復職できたこと。
うつ病の症状から回復することはもちろん大切ですが、再発予防しながら社会復帰ができるかがより大切です。発症に至る原因の課題/傾向を把握し、自分で解決するための対処法を身に着けることが、ビューズを利用する目的です。
また、社会復帰前に「今の自分が好き」と自分を肯定的にとらえられていることも大切です。様々な人の価値観・考え方に触れていく中で「自分はなぜ働いているのか?」「何を大切にしたいのか?」を深く考えることで、初めて自分の価値観に気づけます。自分の働く理由や大切にしたいことが見えることで、復職後の働き方や人生の方向性が示され、キャリアを前向きにとらえることができます。
ビューズでは、再発を防ぎ、社会復帰後も働き続けられるような復職支援を大切にしています。
今休職して焦りを抱えている方にとって、今回のブログがヒントになれば幸いです。
今後もブログにて様々な事例をご紹介していきます。