まずはOさんが私たちのところに通い始めるまでの経緯を教えてください。
Interview卒業生インタビュー
再就職を決められた
Oさんへインタビュー
お話を伺ったのは、私たちのプログラムを経て再就職を決められたOさん。
通い始めたきっかけからプログラムの感想、参加してよかったことまで、たくさんのお話を聞かせてくれました。
卒業生Oさんのプロフィール
- 現在52歳(ビューズ通所開始時:50歳)、男性、ビューズ利用期間:15カ月
- 33歳の時にうつ状態の診断を受け、40歳で双極性障害II型の診断に変更。以後、休職と復職を繰り返した。ハローワーク名古屋東でビューズ@名駅の紹介を受け、見学。疾病による感情のコントロールの難しさと職場の人間関係に悩んでおり、ストレスの少ない人間関係づくりを学びたいと入所。銀行員として約20年間勤務していたが、ビューズ通所中に退職。職業的価値観を見直し、人と接し、人の役に立てる職業を希望し、タクシー運転手として再就職。
利用者さんの
楽しそうな姿を見学して
私はもともと銀行員だったのですが、10年くらい前に入社してから何度も休職して、また復職するという生活を繰り返していたんです。一言でいうと、仕事と自分が合っていなかったんでしょうね。とくに5年ほど前からは、自分の病気とうまく付き合いながら仕事を続けていくのがむずかしくなってきまして…。
私たちのところは、どのようにしてお知りになられたんですか?
私は人と話をすること自体は好きなんです。ただし当時の職場は、人と接する機会の少ない事務職。このままなら、復職してもまた同じことの繰り返しになってしまうと感じたので、思い切って転職活動を始めたんです。それでハローワークに話を聞きに行きましたら、「まずはこういうところに通ってみたらいかがですか?」と4つの支援機関を紹介してもらいまして。その中の1つがビューズさんだったんです。
最初はいくつかの選択肢があったんですね。ちなみに、支援機関に通うことに対して迷いなどはありませんでしたか?
以前に1年ほど別の施設に通った経験がありまして、そのときに孤独感が癒やされたというか、精神的にすごく楽になれたことがあったものですから、迷いなどはとくになかったです。それで、紹介していただいた4つの施設をすべて見学しまして、もっとも素直に「ここでお世話になりたい」と思えたのがビューズさんでした。
ありがとうございます。どういった点が決め手になったんでしょうか。
ほかの利用者さんたちとコミュニケーションをとれる機会が多く、明るくてあたたかい雰囲気に満ちているのが印象的でした。それになんといっても、利用者の皆さんがすごく楽しそうにされていて。「自分もここに通って、こういう風になりたい」と思ったんです。
自分のことをわかってくれる
人たちがいた
入所されてから、なにか困ったことなどはありませんでしたか?
支援員の皆さんがバックアップしてくれますし、私が入った頃はコミュニケーションを大切にされる方が多かったものですから、わりとすぐに皆さんと打ち解けることができました。それにビューズさんは、BBQや工場見学、花見などのイベントが多いんですよね。ほかの方も「本当は引っ込み思案なんだけど、イベントがたくさんあるおかげで自然と仲良くなれる」とおっしゃっていたのをおぼえています。
そうやってほかの利用者さんとコミュニケーションを深めていく過程で、自分自身にどのような変化があったと感じていますか?
私のようなうつ病の人たちって、家族にも、自分の両親にもわかってもらえない。ものすごく孤独だと思うんです。唯一、主治医だけは話ができますけど、それだって診療時間は1回5分くらいで、ほとんど薬をもらいに行くだけのようなもの。そんな中で、自分と同じような病気で悩んでいる人たちと思いを共有することができた。「自分は一人じゃないんだ」「自分のことをわかってくれる人がいる」。そういう風に思えたことは、自分にとってすごく大きかったと思います。
周りの視点や意見が
たくさんの気づきに
プログラムのことについてもお聞きしたいです。とくに印象に残っている内容はありますか?
いくつもありますけど、まず1つはセルフモニタリングです。1週間のあいだにどんなことがあって、それに対して自分がどのように感じたか? そういったことを毎日細かく書き込んでいって、それを2週間に一度、みんなで発表し合うんです。これにはたくさんの気づきがありました。
今でもおぼえていることはありますか?
発表してから周りの皆さんに思ったことや気づいたことを話してもらうんですが、妻とケンカした後に「あなたもつらいと思うけど、奥さんはこういう風に考えていたんじゃない?」ということを、女性の方から言っていただいたことがありました。これは説得力がありましたね(笑)。客観的な視点から見てもらうことで、自分では思ってもみなかったフィードバックが得られるんです。そういう意味では、対人関係グループワークのプログラムもすごく勉強になったと思います。
どのような点が勉強になったのか、具体的に伺えますか?
最初に対人関係の専門的な理論を学んだ上で、それをベースにしながら、皆さんが抱えている問題についてアドバイスを出し合っていく。そういった進め方がよかったと思います。やはり私にしても、以前の職場では対人関係の悩みが非常に大きくて。今から思えば「正しい」ということにこだわり過ぎていたと思うんです。
「正しさ」を過度に重視していたということですか。
ええ。職場でも、上司の言うことが間違っていると思えば「それはおかしいんじゃないですか」とはっきり伝えていました。ただ、それで人間関係が崩れてしまうようなこともありまして…。でもプログラムで皆さんのいろんな意見を聞いたおかげで、同じ言葉でも人によって受け取り方が違ったり、単に自分の思い込みだったり。物事にはいろんな視点や解釈の違いがあると気づくことができたんです。
価値観に合った
就職先が見つかった
Oさんが私たちのプログラムを受けていたのは15ヶ月間。その後は定着支援にも参加していただきましたが、就職活動はプログラムが終了する前から始めていましたね。
就職活動中も書類選考が通らなかったり、面接を受けても落ちてしまったり、いろんなことがありますので、支援員や周りの皆さんにアドバイスをもらったり励まされたりして、すごく助かりました。時にはうつに近い状態まで落ちてしまったこともありましたけど、なんとか皆さんのおかげで気分を回復させながら、自分の考え方や書類を何度も見直したりして…。
そして就職活動からおよそ半年で、タクシー会社に再就職が決定。本当におめでとうございます!
ありがとうございます(笑)。支援員の方に「自分が何をやりたいか、どういう風に生きたいか」という職業的価値観をしっかりと掘り起こしていただいたのが大きかったと思います。だからこそ「受かればいいや」ということではなくて、自分の価値観にしっかりと合った就職先を見つけることができました。
実際のお仕事はいかがですか。
いろんなお客様がいらっしゃるので、もちろん大変なこともありますが、自分の価値観を大切にしたおかげで「やっぱりこの仕事は楽しいな」と思うことができています。それに上司がとても信頼のできる方で、「この人と一緒に働きたい」と思うことができる。そういう意味でも、最後までブレずに就職活動をがんばって本当によかったと思います。
一人ひとりの自由を
尊重してくれる
私たちのところに通ってみて、ほかにはどのような点がよかったと感じていらっしゃいますか?
ビューズさんのプログラムは、まず相手を尊重した上で、こちらの思うことを率直に伝える。お互いを否定しないことがルールになっていますよね。そういった自分も相手も尊重する関係づくりは、卒業後の生活にも大きく生かされていると思います。もちろん、それがいつもできているわけではないですけどね(笑)。あともう一つは、たくさんの仲間ができたことです。
そういえばOさんは、利用者さん同士のサークルをおつくりになりましたね。
ええ。今でも週に一度、現役もOBも関係なく集まって、農園で作業したりハイキングに行ったりしています。今の仕事でがんばっていけるのも、そういう大事にしたいと思える仲間に出会えたからこそ。みんなとは、これからも末永く付き合っていきたいと思っています。
では最後の質問です。今これを読んでいる人たちに、卒業生として「これだけは伝えたい」ということはありますか?
そうですね。私はたまたま再就職が目標でしたが、ビューズさんは転職や復職などに限らず、その人それぞれが選んだ道を一生懸命に支援してくれるじゃないですか。「自分はこういう風にしたい」という、一人ひとりの自由を最大限に尊重してくれる。そういうところが一番の魅力なんだと思います。