ビューズでは、月に数回ダイアログというプログラムを行っています。
ダイアログは日本語に直すと『対話』という意味で、対話を通して他の人の意見を聞き、自分の考えの幅や視野を広げることを目指します。対話のテーマは、スタッフが日頃の利用者さんの様子や悩み事を拾い、毎回設定しています。様々な意見に触れて選択肢が広がることで、気が楽になったり、時には自分では思いつかなかった良いアイデアがみつかることもあります。
今回は、「SNSとの付き合い方」というテーマでダイアログを実施した際の内容をご紹介します。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の使い過ぎには悪影響(スマホ依存、他者比較・承認欲求が強くなる、不眠になるなど)があると言われています。SNSは新しい情報や自分と同じ趣味・志向を持つ仲間とつながれる便利なサービスですが、SNSでの出来事や情報がきっかけになって気分が落ち込んでしまう方も多く、社会問題になっています。しかし、スマホがこれだけ普及し、便利さを享受している以上、SNSを完全に断つことは難しく不便さを感じてしまうでしょう。そのため、SNSとの上手な付き合い方を考えることが大切です。
プログラムでは、まずSNSとうつの関係について考えてみました。
現代では、SNSは私たちの日常生活に欠かせないものとなっています。友人や家族とのコミュニケーション、情報の共有、趣味の交流など、SNSは多くの利便性を提供しています。しかし、SNSの使い方によっては、メンタルヘルス、特にうつに悪影響を与えることがあるため注意が必要です。
なぜ、SNSがうつに悪影響を与えるのでしょうか?その原因について、SNSの特性と関連づけて説明します。
1. 比較によるストレス
SNS上では、他人の成功や幸せそうな生活がよくシェアされています。これを見て元気をもらうこともありますが、心身の状況によっては気分が落ち込むこともあります。自分の生活と他人の理想的な姿を比べることで、自己評価が低下してしまうためです。こういったストレスは、自己嫌悪や無力感を引き起こし、うつの症状を悪化させる要因となります。
2. 情報過多と決断疲れ
SNSは日々たくさんの情報を提供します。ニュース、友人の投稿、広告、動画など、情報の種類も多岐にわたります。この膨大な情報に絶えず晒されることで、脳は過剰な刺激を受け、処理することが難しくなります。いわゆるが情報過多の状態です。また、SNSでは、さまざまな情報や意見が提示されるため、選択肢が増えます。例えば、どのニュースを信じるか、どの製品を買うべきか、どのイベントに参加するかなど、い無意識に日々多くの決断を迫られます。このように選択の機会が多いと、選ぶたびにエネルギーを消費し、最終的に決断疲れを感じ、メンタルヘルスに悪影響を与えることにつながります。
3 孤立感
SNSは世界中の人々とつながることを可能にしますが、対面での交流に比べて、オンライン上のコミュニケーションは感情の細かなニュアンスや非言語的な要素を伝えにくいため、深い信頼関係を築くのが難しいです。このため、SNS上に多くの「友達」や「フォロワー」がいても、実際には孤独を感じることがあります。この孤立感がうつの引き金になることもあります。また、SNS上では、誤解や争いが生じやすいです。匿名性や距離感があるため、対面でのコミュニケーションに比べて、攻撃的な発言や誤解が起きやすく、これが人間関係の悪化や孤立感を引き起こすことがあります。
4. コミュニケーションの取り違い
私たちは本来、言葉だけでなく表情や声のトーンなど非言語の部分の情報を読み取りながら相手の言葉を理解します。しかし、SNSは文字情報だけでやり取りするものもあり、時にニュアンスがずれて誤解を生むことがあります。身近な例では、自分がLINEでメッセージに対して的外れな返答が返ってきて、「そういう意味じゃないのだけど…」と感じた体験が一度はあるのではないでしょうか。最初は些細なストレスであっても、「どうすれば伝わるのか」と思い悩んだり、時には「自分のことを分かってもらえない」感情的になってしまい、相手との関係性に悪影響が出ることで大きなストレスにつながります。
5. 睡眠の質が低下する
SNSを使用することで、精神的に刺激を受けることがあります。特に、事件などのショッキングなニュースや感情的な投稿、エンターテインメントコンテンツなどは、脳を活性化させ、リラックスして眠る準備ができなくなります。この結果、入眠が難しくなり、眠りが浅くなります。また、SNSの使用が習慣になると、寝る前の時間をSNSに費やすことが常態化し、就寝時間が遅くなることがあります。夜更かしが続くと、睡眠時間が不足し、足りない分を長い昼寝で補おうとすることで、昼夜逆転の生活リズムにつながってしまいます。また、昼寝ができず、かつ翌朝早く起きなければならない場合、睡眠不足が蓄積し、慢性的な疲労感や集中力の低下を招きます。さらに寝る前にスマートフォンやコンピュータを使うと、ブルーライトの影響で睡眠が浅くなります。睡眠の質が低下することで、人によっては睡眠障害に発展し、うつのリスクを高めます。
SNSのメリット・デメリット
SNSとうつの関係性をおさえた上で、具体的な対策を考えるためには個々人がSNSからどのような影響を受けてしまいがちか、という現在の問題点を探る必要があります。
そこでビューズ利用者の皆様に「SNSのメリット・デメリットは?」というテーマで話し合っていただき、下記の意見が挙がりました。
メリット:
・会えない相手との気軽なコミュニケーションが取れる
・新たな友だちとの出会い
・情報入手の速さ
・世界中の情報を見られること
・好みのものや欲しいものの情報収集
・良かったものや出来事の共有
デメリット:
・不快な情報への接触
・考えの偏りを助長
・いつでも連絡できることへの煩わしさ
・他者の投稿によってうらやましいとかモヤモヤした気持ちが生じること
・思わず見てしまうこと ・目の疲れや視力の低下
他にも様々な意見が挙がりましたが、SNSではメリットとデメリットが表裏一体になっているようでした。相手と気軽にコミュニケーションを取れることで繋がりを感じることができる一方で、そのことを煩わしいと感じることもあります。また、さまざまな情報を見ることができる一方で、その情報によって不快な気持ちになることもあります。
そこでさらにでは、「SNSとの付き合い方は?」というテーマで話し合っていただきました。
付き合い方のアイディア
・SNSでの繋がりの煩わしさへの対応:
グループからの通知のオフ、長期間連絡を取っていない人の連絡先を削除する
スタッフのコメント:煩わしさのきっかけが、スマホに表示される通知や、今関わっていない人からの近況投稿、ということはよくあります。通知を切ったり連絡先を削除することで、きっかけを減らし自然に距離を置くことができるようになります。
・不快な情報への対応
攻撃的な内容を言う人をブロックする、見たくない投稿を非表示にする
スタッフのコメント:不快な情報は入ってきてしまいますが、ブロックや非表示は見る側である自分ができる身を守る手段です。自分で選ぶという感覚を大切に、身を守るための行動を起こしましょう。
・相手とのスムーズなやり取りのためにできること
ニュアンスを伝えづらい内容については電話で伝える、自分の体調によってはSNSと距離を置く、返信する前に一呼吸おく、相手が生身の人間であることを意識して投稿する
スタッフのコメント:文字情報だけだと誤解が生じやすいのはうつとSNSの関係で解説した通りですので、大事な内容を送る時ほど、一度立ち止まって考えたり、電話や対面で伝えることとSNSで伝えることを分けるのは大切です。
SNSにずっと触れていない方がいいと頭でわかっていても、SNSをつい見続けてしまうという悩んでいる方は多くいらっしゃいました。そのため、アイディアとしてあがった「連続でたくさん見ない」を具体的にどう実行するかを追加で対話し、スマホを一時的に誰かに預ける、自室以外の場所で充電する、スマホを置いて家族と話す時間を作る、など具体策があがりました。「それなら実行できそう」という声が聞こえてきたとき、ダイアログが目指す考えの幅が広がった瞬間を体験されたのだと感じ、嬉しくなりました。
いかがでしたでしょうか?
SNSは私たちの生活に多くの利便性をもたらしますが、その使い方には注意が必要です。SNSの影響でうつ病のリスクが高まることを理解し、適切な対策を取ることで、心の健康を守ることができます。デジタル時代において、バランスの取れたSNSの使用が、より健全な生活を送るための鍵となるでしょう。
今後もダイアログで扱ったテーマの中で、皆様のお役に立てる内容を発信していきます。